日本は水資源が豊かで、水を取り巻く環境設備も整備され、いつでも衛生的な水を得られる世界でも稀な国です。水道をひねれば飲用水が24時間得られることが当たり前で、使い放題、流し放題。日頃水のありがたさを思う機会は少ないことでしょう。
しかし、世界に目を向けた時、私たちが何気なく使っている、または垂れ流している水がどれほど貴重であるかを知ることでしょう。
地球上の水の総量は14億㎞³。そのうち海水が96.5%を占め、人間が飲用として利用できる淡水は2.5%にすぎません。そのうちの大部分は、南極・北極に氷河として存在しているため、実際に利用できるのはわずか0.8%ほどである、といわれています。
世界人口の増加や、人々の生活の向上にともなって、水資源の確保は国家間の重要な課題となってきています。その結果、富む国とそうでない国との「水格差」ともいうべき問題がおこっています。
世界60億の人口のうち、30億人は安全な水を飲めないという状況にあります。
12億人が安全な水を利用できなく、毎年500万人から1000万人は不衛生な水を使うことによる病気で命を失くしています。
国連の調査によると、2010年には約220万人が下痢に関する病気で死亡、その80%が生後2年までの乳幼児で、その99%が貧しい国の子供でした。
アフリカやアジアなどの貧困地域では、上下水道はおろか、安全な水を供給する施設もありません。そうした地域では毎日の水汲みが欠かせません。女性や子供たちがこの仕事にあたることが多く、帰り道に襲撃され大切な水を奪われるなどの危険が絶えずあります。そうして命がけで得た水ですら、安全とはいいがたいのです。
また、水の供給地(河川、井戸など)までの道のりが遠く、水汲みのために学校に通えない子供たちも多くいます。
水不足は、農耕・牧畜にも深刻な被害をもたらし、直接的に生活の安定を脅かします。
普段、何気なく使用している水について、安全な水を得られない人々が世界の半数にも上ると知った時、衝撃を受けました。
また、バーチャル・ウォーター(Virtual Water。食料を輸入している国において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どれほどの水を消費するかを推定した数値)において、日本が世界の大量の水資源を消費しているという現状を知りました。海外の水不足や水質汚濁は、私たちと無関係ではないのです。
日本は、幸運にして、山水に恵まれた水資源の豊富な国です。しかしそうした国は、世界でも有数であり、アフリカなどにおいては、一杯の水を得るために半日を費やす国があります。
かく言う私も、多分にもれず、お風呂をこよなく愛す日本人。どこかに良心の咎めを感じながら、毎日200リットルの貴重な水資源をまさしく湯水のようにかけ流しています。
その一方で、年間数100万人の子供たちが水不足、或いは汚染された水で命を落としているのです。
世界の水をめぐる不平等を改善する手立てはないものか。
生まれた国や地域で、子供たちの未来や可能性が奪われるようなことがあってはならない。
自分にできることはなんだろう?
こうして、世界の水不足に悩む地域への井戸掘りのプロジェクトを推進することとなりました。
世界の平和や、教育、人権、貧困、これらの諸問題も、まず生きていく上で必要不可欠な「水」が確保されなければ、その先は有り得ないと考えられるからです。